TEISCO TB-64は日本版のDanelectro 6 string bassかFender Bass VIみたいな製品。ボディ・シェイプやトレモロ・ユニットを載せてる点などから、Fenderの方を参照したと思われる。弦長760mmのショート・スケールで、チューニングは(ギターの5度下げ=いわゆるバリトン・ギターにする方法もあるけど)私はギターの1オクターブ下げで用いてました。
1960年代の6弦ベースは(現在のとは違って)使い道の限られた特殊楽器。しかもそれのテスコ製コピー品(弾きづらい)となると実用性は全くない。しかし音色は良い。といっても、ドラムと合体してリズム・セクションの核を担う、普通のエレキ・ベースとしての良い音ではなく、TB-64でしか出せない音があるという意味合いに限っての良い音。それを活かせる使い道があるなら手放さなかったのだけど、結局はこの通り。
「ならではの使い道」が無いわけじゃないんだけど、自分にとっての必需品ではなかったです。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
---------------------
■TEISCO TB-64は1パート。卓直で録音。
■TB-64 → BOSS GT-10のデジタル・アウト → DAWという接続順。
■PUポジションはF+R。Bass Cut SWはOff。
■BOSS GT-10でロータリー・エフェクトを掛けてます。
---------------------
■ギターはアコースティック+エレキ2本の、計3パート。
■アコギはYAMAHA LL-6J
■収音マイクはRCA BK-5B、マイクプリはFocusrite Twin Trak。
■マイクの立て方は下手側やや上方からサウンドホールを狙う。距離は約20cm。
■Focusriteの設定は;
INPUT | EQ | Comp. | |
Mic In | OFF | Comp=11時 | Slow Att=Off |
Imped.=620 | Release=Auto | Hard Ratio=Off | |
Gain=フル | Makeup Gain=1時 | Hard Knee=Off |
■エレキ2本もBOSS GT-10を介して卓直。
■R ch.はNBストラト・コピー
■ストコピ → Ibanez PM7 → GT-10のデジタル・アウト → DAWという接続順。
■PM7の"WAVE FORM"をパルスで、つまりステップ・フェイザーとして使用。その他の細かい設定記録は無し。
■GT-10でファズとオート・ワウも掛けてます。
■L ch.はYAMAHA STH-500R
■GT-10でコンプ、オーバー・ドライブ、ロング・ディレイを掛けてます。
---------------------
■ドラムはKORG ER-1
■ER-1 → ART DUAL MP → Focusrite Twin Trakのデジタル・アウト → DAWという接続順。
■ART DUAL MPの設定は;
INPUT | OUTPUT | |
3時 | 10時 | High Z Inputを使用 |
■FocusriteはA/Dコンバータとしてのみ使用。
■ER-1のプリセット・パターンは、一番最後の方でA24/Minimal 1(BOSS SL-20 SLICERのお別れ録音で使ったのと同じ)をほぼノンエディットで使ってる以外は、大幅にパーツ抜き等したものを2パート組み合わせるなどして用いてます。部分的に"grungelizer"を掛けてたりもしてます。
■DAW上でリバーブを掛けてます。設定は以下の通り;
---------------------
■ノイズ、シンセ・ベース、それと(ブランコがキーキー鳴ってるような)高音パートはKORG MS2000。
■シンセ・ベースの録音方法の記録は無し。パッチはプリセットの"What D'Time"をほぼノンエディットで使用。
■ノイズはGT-10でロータリーを掛けてデジタル・アウトから卓直。
■高音パートはプリセットの"Turn Wheel"
■GT-10で歪みとオート・ワウ(だったか)を掛けてデジタル・アウトから卓直。
■ノイズは、Sampletankの"Ocean Drum"も用いてます。
■NATIVE INSTRUMENTS B4のロータリー・エフェクトを掛けてます。
---------------------
■録音期間;
TB-64;2014年6月24〜27日
それ以外の楽器;6月27日〜8月10日
---------------------
TB-64を普通のエレキ・ベースとして用いる作例は既に3つ作り(Teisco EP-9、YAMAHA SG-2C)、その結果、TB-64を普通のベースとして使うのはNGなのが分かってしまった。だから次に作るべきなのは、普通のベースではない使用方法のものである。
1.
ところで、フェンダーやダンエレクトロの6弦ベースをハモンド・オルガン用のロータリー・スピーカーに通して映画のサントラ=劇伴音楽に使うのは、わりと定番の使用法らしい。いや、定番と言えるほど一般的ではないかもだけど、少なくともある一時期ある方面では多用されたらしい。
(という話しを私は誰かと雑談してる時に聞きかじったかネットで拾い読みしたかで知ったのだけど、これが本当かどうかを確かめるため改めてググってもソースは発見できなかった。だからこの件はガセかも。)
しかし私にはBOSS GT-10のロータリー・シミュレータがどの程度使えるものかを試しておく必要もあって、だからこの話しには乗ってみようと思った。
2.
また、6弦ベースを使った著名曲として私が思い付けるのはGlen Campbell "Wichita Lineman"くらいしかないのだけど、6弦ベースの音は、この曲の背景のオクラホマ〜アメリカ中西部の広漠とした半砂漠地帯の景観に似合うのかも。
3.
それと、これは6弦ベースとは関係ない事なのだけど、自分はパット・メセニー等のいわゆるコンテンポラリー・ジャズの類をほとんど聴かない(まるで興味がない)。ただ、メセニーにはサントラ的な曲が多い。
・擬似大形式というか小組曲風というかな、演奏時間10分前後の中で山あり谷ありな展開をしてみせるもの。
・エレキ・シタールでリードを弾く牧歌調の曲。
・アコギのアルペジオが延々続く系の曲。
等々。それで自分は、アルペジオ型のはちょっと真似してみたいと前から思ってた。
以上の3要素を組み合わせると、
「6弦ベースとロータリー・アンプとアコギを組み合わせて、砂漠っぽい景観が想起されるような、サントラ、劇伴風の曲」
となる。じゃあまあそういうのをTB-64のサンプル・サウンドとして作ってみましょうという事になった。その結果は既にお聴き頂いた通りですが、一応もう一度MP3プレイヤーを貼っておきましょうか。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
ちっとも砂漠っぽくない()。むしろ海のイメージ。あるいは河童の国へようこそ!的な、水資源大国日本の在住者が音で景観を描こうとしたら普通こうなりますわな的な、そういうものが出来上がってしまったのには自分でもびっくりだ。
まあ私はそもそも砂漠とか行った事ないし、行ってみたいとも思ってないのだ実は。だいたい、砂漠っぽい音を作ろうとしてるのに波音(Ocean Drum)を混ぜてるのがおかしいのだけど、自分的に今回のにはどうしても波音を加えずにはいられなかった。ボスのスライサーのサンプルは明確なプランもなくテキトーに音を重ねただけのもので、波音も混ぜてないのだけど、それでも水分たっぷりの、半魚人の体育祭みたいな雰囲気の曲になった(と自分では思ってる)。こういうのはほんと体質的なものなのでしょうねえ。
TB-64で砂漠っぽいサントラ風のを作ろうと決めたのは1年以上前の事でした。しかし具体的にどういう曲にするかはノープランで、「お別れ録音」ではいつもの事なのだけど売却する日取りが決まってから急遽やっつけ仕事で済ませるお約束のパターンに今回も陥ったです。
・前半はゆっくりで静か。
・途中、TB-64をソロで目立たせる場面を設け、
・後半はテンポ早めてにぎやか。
というのだけしか決まってない状態で録音開始。じゃあベースのノートはほぼ全て"D"でいいや。D-pedalですね。
「この曲はD-pedalで可能な限りの事を色々試すためのものでもある、という事にした(具体策は後日考える)」
みたいな。そういう行き当たりばったりな作業の進め方では、自分の体質にはない音(砂漠)を作るなんてのもどだい無理な相談かもですね。
---------------------
今回の作例はTB-64の音の特徴を活かすためのものだけど、TB-64が主役なわけでもない。かといってギターその他が主役なのでもない。つまり、メロディー担当が主役といった意味での主役、外形的な、あるいは役割分担的な意味での主役が存在してない。だから曲としての明確な形はなく、その代わりもわっとした時間のかたまりを作る事を意図した作例だったかもです。というか、作業を進めてく中で、そういうのが出来たらいいなという考えが生じた。
聴き手にメロディを追いかけさせる事で小分けされた時間を消費させるのではなく、ミニマル、アンビエント、あるいはアシッド系の時間のやり過ごし方とも違う、音楽と時間との関係のあり方があるのではないか?
サントラというのは、楽曲としての自律性が低くてもかまわない(むしろ自律性が高いとサントラには使えない場合も多い)。だから、楽曲っぽい外形(通念としての音楽らしさ)を持たない音楽を試作するのに適した場なのかもです。とはいえ私が作るのはあくまでもサントラ"風"のものであって、実際に映像と組み合わせるのを意図してるのではありません。あと一応念のため、19世紀の後半に流行した標題音楽の類とも違います。ロマンチックにうっとりするのはアシッドの仲間ですね。それはそれで悪くないけど、今更わざわざ作り足す必要もなさそげな。