2013年11月06日

【お別れ録音】YAMAHA SG-2C

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 日本ではナスビ、外国ではearlobe(耳たぶ)とかflying bananaとかと通称されるYAMAHA SG-2C。発売されたのは1968年。寺内SG(SG-5とかSG-7)があまりにも高額すぎたから、仕様全般をスペックダウンした分、廉価でお求めやすくなったのがSG-2C、なハズなんだけど、何がどうしてこうなった★見た目はすごくへん。だから売れ行きは悪かった(と思う)。現存数は寺内SGの方がずっと多いですからね。

 それでも、最近の人がこのエレキをガレージ・サーフ系のバンドで使ってる動画がYou TubeにUPされてて、Fuzzかませたブッとい音……なんというか、
「厚かましいまでの太ましさ」
とでも呼びたいような、かなり良さげな音を聴かせてくれてます。実際、そういう使い方にも向いてるエレキなんだとは思います。しかし私が「お別れ録音」用に録ったのは大人しめの音。SG-2Cは、
・ストラップで吊っても、やはり持ちにくい
・ネック幅が狭すぎる
という2点を除けば充分に弾きやすい方のエレキなので、勢い任せの弾き倒しよりかは、もうちょっと丁寧に扱ってあげたい。廉価モデルといっても当時の定価¥19,000-はけしてお安くなく(Teisco K-4Lとほぼ同額)、トレモロ・ユニットは精度・操作感の両方とも申し分ない。高額なだけの事はある良品だと思います。

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作例その1;

作例その2;

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今回のお題は
The Hollies "BUS STOP"
The Zombies "She's Not There"
でした。"BUS STOP"は1966年、"She's Not There"は1964年のヒット曲。いわゆるブリティッシュ・インヴェイジョンを代表するのでもない、言っちゃ悪いがわりと傍系な2曲ですけど、そもそもは、

・別のエレキ(YAMAHA SA-15DとTeisco Vegas40)の「お別れ録音」用にビートルズのカバーを現在作成中。
・日本のエレキメーカーはビートルズ人気とかGSブームに対応すべく、1966年頃から製品仕様を刷新した。
・SA-15DとVegas40はGS対応型の代表例だから、これ用の「お別れ録音」はビートルズのカバーにすべきであろう。
・いや、日本のGSカバーでもいいんだけど、どうせやるならビートルズの方が良いかなやっぱり。
・ところが、私はビートルズに対しては「昔に流行ったポップスのスタンダード」くらいの認識しか持っておらず、あまり詳しくは知らない。

 まあ、私が普段よく聴くソウル等も「昔の流行歌」という点では同じなんですけど、ビートルズ(に限らず英国のバンドは概ね全て)グルーヴがへん(だと私には感じられる)。そして英国の録音スタジオの音質は「息苦しい」と感じる。だから詳しく知らないというよりも本当は、あまり聴きたくないジャンルなのです。
 とはいえビートルズのカバーをすると決めたので、改めてビートルズの全アルバムを聴き直し、ついでだから今までほとんど聴いた事がないブリティッシュ・インヴェイジョン期のその他のバンドの音も一応は知っておこうと考えた2013年の春頃、9枚組のコンピレーションCD、

85b.jpg
"The British Invasion; The History Of British Rock"

↑これを図書館で借りて聴いてみた。その中から、
・私が好きで、
・なおかつインスト化しても面白そうな曲。
という基準で選んだのが"BUS STOP"と"She's Not There"。つまり今回の2曲は「ビートルズのカバーをするぞ計画」の副産物みたいなものなのです。しかし、ビートルズ・カバーはVo.入りになる(はず)だから出来上がるのはまだまだ数ヶ月後。インスト版の方を先にUPしときます。

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 ベンチャーズ等のエレキ・インスト(サーフ・インスト)のレパートリーには当時のヒット曲をインスト化したものが多いけど、彼らの人気のピークはブリティッシュ・インヴェイジョンの前だから(というか、英国勢がテケテケを駆逐してしまったような一面もあるから)、エレキ・インストの著名曲に英国の曲は含まれてない、んじゃないかな。
(一応ベンチャーズはビートルズをやってるけど、熱心なベンチャーズ・ファンでさえこれはスルーするに違いないと思わされる珍味なお花畑もとい苺畑。事実上の「あって無きが如き」ものである。)
 しかし、もしもエレキ・インストの人気が(英国勢と共存する形で)60年代後半も継続してたなら英国産ヒット曲も大量にエレキ・インスト化されてたに違いなく、だから"BUS STOP"や"She's Not There"のエレキ版もあった可能性がある……という、つまり今回の作例2曲は音楽史での「たらればネタ」なのでもあります。

 ですので私としてはギターの奏法やバンド全体の音作りを、なるたけエレキ・インストの作法通りにしたかった。でも完成したのを改めてベンチャーズと聴き比べてみたら、なんかぜんぜん違いますですねこれ。でも私的にはベンチャーズもあまり好んで聴く方のものではなく、ギターの奏法と音、バンド全体の音、アレンジのアイディアは好きだし色々参考にもするけど、グルーヴがちんまいんで、そんなところまでは真似したくない。熱心にコピーしようとするとへんなグルーヴに感染する恐れもありますし、だからお作法通りにはならない半端コピーで終わるのがむしろ順当かなとも思います。

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 今回の2曲で用いたギターは("BUS STOP"のバッキングのアコギを除き)、全てSG-2C。設定を変えるとまるで別のエレキのような音になります。弾きやすさに関しては先述した通り。正直、手放したのはもったいなかったかも。録音時のセッティングは以下の通り。

1.BUS STOP

■リード・ギターのアンプと収音マイクは、
YAMAHA YTA-25→AUDIX D1

PUポジションTone
1st verseRFull
2nd verseFほぼゼロ

■両方ともBOSS-DM-2を掛けてます。設定も両方共通で、

RepeatrateEchoIntensity
10時9時半センター

1st verse、リアPUに掛けた方のディレイ音はあまり目立ってないですね。あると無しとじゃ大違いなんですけど。

1st verseの方にはDAW上でリバーブを足してます。設定は以下の通り。
85c.jpg

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■バッキングのエレキ(4分音符のアルペジオ)は、BOSS GT-10のデジタル・アウト卓直。
■PUポジションはF。GT-10のパッチはツインリバーブ風のクリーン。

これにもDAW上でリバーブを足してます。設定は以下の通り。
85c2.jpg

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■ベースはTeisco TB-64

■PUポジションはF+R
■プリアンプはART DUAL MP
■コントロールの設定は、

INPUTOUTPUT 
ほぼフル10時半High Z Inputを使用

■Focusrite Twin TrakをA/Dコンバータとして介して卓直

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■コードストロークのアコースティックGtrはYAMAHA LL-6J
■収音マイクはAUDIX D4
■サウンドホールのやや上方、やや下手側から距離60cm。

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■バス・ドラムはAKAI CD3000XL
■パッチはAKAI CD-ROM Vol.3のROCK KICK (F1)
■CD3000XLのアナログ・アウトからFocusrite Twin Trakを介して卓直。
■Focusrite Twin Trakの設定は、

INPUTEQComp.
Line InOFFComp=Off
HiGain=Off

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■スネアはKORG WAVEDRUM
■ART DUAL MP → Focusrite Twin Trakで卓直
■ART DUAL MPの設定は、

INPUTOUTPUT 
フル11時+20dB On
High Z Inputを使用

■DAW上でリバーブを掛けてます。設定は以下の通り。
85d.jpg

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■ハイハットはPearl
■収音マイクはMXL R144
■セッティングはシンバル中央から25cm シンバル上面の10cm上
■プリアンプはFocusrite Twin Trak。設定は

INPUTEQ
Imped.=1k6OFFComp=Off
HiGain=Off

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■ライド・シンバルはMEINL LASER
■収音マイクはMXL R144を2本
■セッティングはシンバル中央から35cm/60cm シンバル上面の10cm上
■プリアンプはFocusrite Twin Trak。設定は

INPUTEQ
Imped.=1k6Freq=120HzComp=Off
HiGain=OffDeep=ON

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■オルガンはNATIVE INSTRUMENTS B4
■設定は
85e.jpg

M-AUDIO FireWire 410のアナログ・アウトからの出力をオーディオ・スピーカーで鳴らし、それをMXL R1442本で収音してます。
■マイク・プリアンプはFocusrite Twin Trak。設定は

INPUTEQ
Imped.=1k6Freq=9時Comp=Off
HiGain=OffDeep=Off

DAW上でリバーブを足してます。設定は以下の通り。
85f.jpg

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■録音期間;
エレキ&アコギは2013年6月16〜17日
その他は2013年10月8〜11日

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2.She's Not There

■L ch.のバッキングのエレキは、BOSS GT-10のデジタル・アウト卓直。
■PUポジションはR。GT-10のパッチはJC120クリーンでスプリング・リバーブが多め。

■それ以外のエレキは全て、YAMAHA YTA-25→AUDIX D1

PUポジションエフェクター
1st verseのリードFnon
2nd verseのオブリFThomas WAH
間奏と3rd verse リードRVOX V830Thomas WAH

1st verseのリードにはDAW上でリバーブを足してます。設定は以下の通り。
85g.jpg

■R ch.のトレモロ掛かってるバッキングは、PUポジション=Fで、トレモロはYAMAHA YTA-25。設定は、
INTENSITY=6 SPEED=4

これにもDAW上でリバーブを足してます。設定は以下の通り。
85h.jpg

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■ベースはTeisco TB-64

■PUポジションはF+C Tone=ゼロ
■プリアンプ等の設定は"BUS STOP"と同じ

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■バス・ドラムはAKAI CD3000XL
■パッチはAKAI CD-ROM Vol.3のROCK KICK (note=G)
■CD3000XLのアナログ・アウトからFocusrite Twin Trakを介して卓直。
■Focusrite Twin Trakの設定は、

INPUTEQComp.
Line InOFFComp=2時Slow Att=On
HiGain=OffRelease=AutoHard Ratio=Off
Gain=3時Hard Knee=Off

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■スネアとタムはKORG WAVEDRUM。各種設定は"BUS STOP"と同じ。
■スネアにはDAW上でリバーブを足してます。設定は以下の通り。
85i.jpg

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■ハイハットはPearl。各種設定は"BUS STOP"と同じ。

■ライド・シンバルはZildjian ZBT。各種設定は"BUS STOP"と同じ。

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■オルガンはNATIVE INSTRUMENTS B4
■設定は
85j.jpg

■その他オーディオで鳴らして収音等々は"BUS STOP"と同じ。

DAW上でリバーブを足してます。設定は以下の通り。
85k.jpg

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■録音期間;
エレキは2013年6月16日
その他は2013年10月8〜11日

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もう一度mp3プレーヤーを貼っておきます。

 シンバルは、今回からライド、ハイハット共に本物シンバルになりました。音的には非常に満足できております。とくにHH。安物を叩いてるから安い音なんだけど、そういうのとは関係なく、
「HHとはこうあって欲しい、と思ってた音」
が、マイクを立てるだけで簡単に得られたのには驚いた。というよりむしろ拍子抜け。こんなんだったらもっと早くからこの方式にしておけば良かった。

 しかし、これは誰にでもオススメなのではありません。自分で録ったHHの音を聴いて「これだ!」みたいに感じてる自分は、やはり私はR.V.ゲルダーにすごく影響されたてるようなのです。だから逆に、それ系の音に興味がないとか好きじゃないという人に、私のやり方は勧められないです。

 シンバルというのは低域もかなり出てる楽器です。ライドの低域は邪魔なのでマイクプリのEQでLow Cutしてますが、HHは、低域をよく拾うと評判のMXL R144を近接気味に立ててNon-EQ。それでとくにペダル・ハイハット音(踏んで鳴らすチッ)の低域が私にとっては重要みたい。要するにジャズ4ビートの2・4拍ですね。
「その低域とは、フロアノイズとか風圧なのでは?」
と思われるかも知れませんが、それならそれでもいいのです。R.V.ゲルダーのHHにはボトム成分が含まれてる(ような気がする)。それはべつにR.V.ゲルダーに限った事ではないのかもだけど、
・アコースティック楽器だけの編成で、
・バックビートのアクセントの扱いが重要な音楽ジャンル。
というのはそれほど多くなく、その中でも私はR.V.ゲルダーの音を聴いてきた時間が長いから、やはりすごく影響されてしまってるのかなあと改めて感じた次第です。

 ちなみにスティックはメイプル材メイプル・チップのもの(Pearl 110M)を用いてます。

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 "Rocket Love"の記事でも少し触れた、ソフトウエア音源(B4とかevp73)を「一回空気を通して」、生楽器類との馴染みを良くしようという試み、今回早速試してみました。セッティングは↓こんな感じ。

85l.jpg

 マッキーのミキサーが写ってますが、これはたまたまここに置いてただけで使用はしてません。
 スピーカー、アンプともに20〜30年くらい前の家庭用ミニ・コンポ。機種名等は、わざわざ書き出すまでもないような物です。それに、これらを用いるのは今回限りの可能性も高い。位置関係その他の説明も略しますが、用いたマイク=R144は双指向性で、その点を考慮して色々試してみた結果、とりあえず今回はこういう配置になったです。

 それで、録ってみた結果に対する自己評価は俺GJ☆。けっこう満足できております。こんなテキトーなセッティングでまあまあの結果を出せたのだから、もっと丁寧にナニすれば更に素晴らしい音になるであろう、という気はしないですけどね。
「マイクを通しさえすれば決定的な違いが生じる。」
その事だけは確認出来たという現状です。

 リボンマイクは、やはりアタック成分への追随性が悪いのか、ハモンドの、とくにPercussion Onの音が、DAW内部の原音とMXL R144で拾った音とではかなり異なってます。
 ただ、追随性が「悪い」のはスペック値についての事で、聴感上の好き嫌いは別問題。そして、アタック成分に対して過敏ではないのはリボンのむしろ美点で、R144もその点は実にリボンらしいマイクであるように思われます、今のところ。

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 "She's Not There"のキックはAKAI CD-ROM Vol.3のROCK KICK (note=G)。ヘッドの張りが緩めでサスティン長めのパッチです。これが"She's Not There"には合うだろうと思って選んだのだけど、それは間違いだったという事がミックス作業の終盤になってから判明。サンプラー音源だけど「手弾き」で録ったものだから差し替えるのは簡単ではなく、ゲートで尻尾切りしてもいいのだけどCubaseに付属のゲートを通すと遅延が著しく、もうなんか色々面倒になったので結局、キックの一発ごとにAuto Faderを書き入れてしまいました。

85m.jpg

杜撰な作業です。連打してる個所の尻尾切りは無しですし。

 私はここ数ヶ月、キックのサスティン成分が活きてるトラックを作りたいなと思ってるのだけど、それは
第一には、ボトムエンドの少し上に「隙間」を残すように楽器群を配置する事
第二には、ボトムエンドをキックとベースのどちらに受け持たせるか?
という問題で、ところが今回の作例ではTeisco TB-64の使用実績を増やすのも重要な課題で(何故なら、やはりTB-64は手放す事にしたから)、TB-64には完全な脇役ではなく多少は目立つ役割を与えたい。となるとキックの役割はその分縮小させるべきだけど、TB-64は普通の意味合いでのエレキ・ベースとは少し異なる楽器だからボトムエンドを担うには役不足で、キックの支えは外せない等々、今回の低域はちょっと面倒くさかったです。いや、ボトムに不満が残るのは毎度の事ですけどね。

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 それで、今回のTB-64はピック弾きです。用いたのはジムダンロップのギター用ピック↓

85n.jpg

 弦間ピッチの狭いベースはピック弾きの方が楽ですね。というかTB-64の寸法はギターと同じだから、ピック弾きじゃないと使い物にならないかも。

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 今回、mp3書き出し前のレベル上げに用いたのはPSP Vintage Warmer。「書き出し前のレベル上げ」というか、2 Mix作業の最後の方でマスターch.にこれを挿し、それで微調整したのを完成形としました。マキシマイザ系を併用したものと比べやはり音量は低いのだけど、今までが大き過ぎたのだとも言える。今後しばらくはこの方式でいくつもり。

 mp3変換のレートは192kBit/s。128kだと"She's Not There"に、"Rocket Love"の時と同じプチ・ノイズが発生し、仕方なく192kに。となると"BUS STOP"も、2曲並べるのにレート差があるのはいかがなものかですから、両方を192kにしました。

posted by ushigomepan at 01:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 手放す機材の、お別れ記念録音 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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